依存症と内観dependence and introspection

 

― 指宿竹元病院における実践と成果 ―

 

 

【内観療法とは】

内観療法は、「自分が他者からどれほど支えられてきたか」を事実に基づいて振り返る心理療法です。依存症の症状として多くみられる 自己中心性・否認・他責思考 を和らげ、感謝・謝罪・責任感といった回復に不可欠な心の変化を促します。当院では1975年に導入して以来、依存症治療の中心的な個人療法として発展させてきました。

 

 

【内観療法の方法】

  1. 集中内観(1週間)
  • ・毎日9時間、静かな環境で自分の人生を丁寧に振り返る
  • ・調べる内容は「内観4項目」
  •  ① してもらったこと
  •  ② して返したこと
  •  ③ 迷惑をかけたこと
  •  ④ 返していないこと(竹元式:2024年より導入)

 

  1. 日常内観(毎日1時間)
  • ・入院中は毎日、自室で1時間の振り返り
  • ・退院後も継続し、気づきと行動変容を習慣化する

 

 

【内観療法が依存症に有効な理由】

依存症の症状は、

  • 「自己中心的な思考」「他責・否認」「罪悪感の回避」「人間関係の悪化」

といった心理的特徴を伴います。内観療法はこれらに対し、次のような変化をもたらします。

 

① 「してもらったこと」に気づく → 感謝と自己肯定感が回復する

幼少期から現在まで、どれほど多くの支えを受けてきたかを事実として確認することで、
「自分は見捨てられていなかった」という感覚が生まれ、感謝・他者肯定・自己肯定感の回復につながります。

 

② 「して返したこと」を振り返る → 謙虚さと健全な自己肯定が得られる

「して返したこと」は依存症治療において非常に重要な項目です。

  • 実際には返せていなかった事実に気づくことで、自己中心性や自己正当化が和らぎ、謙虚さが育つ
  • 一方で、わずかでも返していた行動を思い出すことで、“自分にも良い部分があった”という健全な自己肯定感が回復する
  • 「返していないこと」との対比により、より深い気づきと行動変容の意欲が生まれる

依存症の回復には、自己否定でも自己正当化でもない、バランスの取れた自己理解が不可欠であり、この項目がその中心的な役割を果たします。

 

③ 「迷惑をかけたこと」に気づく → 責任感と回復への主体性が生まれる

依存症の行動が周囲に与えてきた影響を事実として受け止めることで、罪の意識・謝罪の気持ち・責任感が芽生えます。

これは、「治療を続けよう」「もう迷惑をかけたくない」という主体的な回復意欲につながります。

 

④ 「返していないこと」(竹元式)に気づく → 他者への敬意・謙虚さの獲得

2024年から当院が導入した竹元式の「返していないこと」は、依存症の方が見落としがちな“本来返すべきだった行動”に光を当てます。より深い気づきと行動変容が生まれやすくなります。

 

これらの変化が、
「行動の変容 → 生活習慣の改善 → 再発防止」 へとつながっていきます。

 

 

【当院の依存症治療構造】

当院では、内観療法を中心に、以下の多面的アプローチを組み合わせています。多職種が連携し、依存症の心理・行動・生活のすべてに働きかける治療体制を整えています。

《個人精神療法》

  • ・集中内観(7日間×2回)
  • ・日常内観(毎日1時間)

 

  • 《集団精神療法》
  • ・生活学習会(体験発表)
  • ・グループミーティング
  • ・アディクション学習(集団認知行動療法)
  • ・大志学習会(感性言語療法) ※感性に訴える言葉を治療に活用
  • ・SST(社会生活技能訓練)
  • ・自助グループ(AA・GA)との連携

 

  • 《薬物療法》
  • ・抗酒薬
  • ・欲求抑制薬
  • ・飲酒量低減薬
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